虫歯治療・根管治療
Medical

歯の痛みや違和感はお口からの危険信号であり、ご不安な気持ちでお過ごしのことと思います。
虫歯は風邪のように自然に治ることがない病気です。
そのためできるだけ早い段階で対処することが、ご自身の歯を永く守るために非常に重要となります。
しかしもし虫歯が進行してしまっていたとしても、決して諦めないでください。
当院が目指すのは、その場しのぎの治療ではありません。
痛みの原因を根本から取り除き、可能な限りご自身の歯を残し、そして、その歯が再び悪くならないように未来までを見据えた治療です。
当院の虫歯治療、そして歯の根の治療である根管治療について、私たちの考え方と取り組みを詳しくご説明します。
まず虫歯がどのようにして発生し、進行していくのかをご説明します。
ご自身の状態を理解することが、適切な治療を選択するための第一歩となります。
虫歯は、特定の条件下で、お口の中の細菌が歯を溶かすことによって起こる病気です。
その発生には、主に3つの要素が関係していると言われています。
歯の硬さやエナメル質の厚みは、人それぞれ異なります。
歯質が弱い方は、虫歯菌が出す酸に対する抵抗力が低いため、虫歯になりやすい傾向があります。
フッ素の活用や、よく噛んで唾液の分泌を促すことなどで、歯質を強化することが可能です。
お口の中には、多くの細菌が存在します。
その中でも、ミュータンス菌などの虫歯菌は、食べ物に含まれる糖分をエネルギー源として酸を作り出します。
この酸が、歯の表面を溶かす直接的な原因となります。
日々の歯磨きや、歯科医院での専門的なクリーニングで、細菌の数をコントロールすることが重要です。
糖分は、虫歯菌の活動を活発にさせます。
特に、甘いものを間食で頻繁に摂取する習慣は、お口の中が酸性の状態にある時間を長くしてしまい、虫歯のリスクを著しく高めます。
食生活の改善も、虫歯予防には欠かせません。
虫歯は、その進行度によってC0からC4までの段階に分けられます。
早い段階で発見できれば、歯への負担が少ない治療で済むことがほとんどです。
| 段階 | 状態 | 症状 | 治療法 |
|---|---|---|---|
| C0 | 初期の虫歯 | 痛みなし | フッ素塗布、適切な歯磨き |
| C1 | エナメル質の虫歯 | 痛み少ない | レジン充填 |
| C2 | 象牙質の虫歯 | 冷たいものがしみる | インレー(詰め物) |
| C3 | 神経に達した虫歯 | ズキズキと激痛 | 根管治療 |
| C4 | 歯の根だけの状態 | 痛みなし→再び激痛 | 抜歯の可能性 |

歯の表面が白く濁ったような状態です。
まだ穴は開いておらず、痛みなどの自覚症状もありません。
この段階であれば、歯を削ることなく、フッ素塗布や適切な歯磨きによって、歯の再石灰化(自然治癒)を促すことが可能です。

歯の表面にあるエナメル質が溶け始め、小さな黒い点や穴ができた状態です。
まだ痛みを感じることは少ないですが、自然に治ることはありません。
虫歯の部分だけを少なく削り、レジン(歯科用プラスチック)を詰めるなどの処置を行います。

虫歯がエナメル質の内側にある象牙質まで達した状態です。
象牙質はエナメル質よりも柔らかいため、虫歯の進行が速くなります。
「冷たいものや甘いものがしみる」といった自覚症状が現れるのは、この段階からです。
虫歯の部分を削り、インレー(詰め物)などで修復します。

虫歯が歯の中心部にある歯髄(神経や血管)まで達し、炎症を起こした状態です。
「ズキズキと激しく痛む」「温かいものがしみる」といった強い症状が現れます。
この段階では、多くの場合、歯の神経を取り除く「根管治療」が必要になります。

歯の大部分が溶けてなくなり、歯の根だけが残った状態です。
神経は死んでしまい、痛みを感じなくなることもありますが、根の先に膿が溜まり、再び強い痛みや歯茎の腫れを引き起こすことがあります。
この段階まで進行すると、歯を残すことが難しくなり、抜歯となる可能性が高まります。
私たちは一本の歯を「単なる歯」としてではなく、患者様の大切な財産の一部として捉えています。
だからこそ、治療においては「歯をいかに長持ちさせるか」を常に念頭に置いています。

一度削ってしまった歯は、二度と元には戻りません。
そして、治療を繰り返すごとに、歯の寿命は少しずつ短くなっていきます。
私たちの使命は、その悪循環を断ち切ることです。
そのため、虫歯の治療においては、まず「本当に削る必要があるのか」を慎重に見極めます。
そして、削る必要がある場合でも、その範囲を可能な限り小さく留めることを徹底します。
正確な治療は、正確な「視診」から始まります。
当院では、以下の道具を用いて、治療の精度を極限まで高めています。
虫歯に感染した部分だけを赤く染め出す液体です。
これを使用することで、術者の勘や経験に頼ることなく、感染部分と健康な部分を明確に見分けることができます。
虫歯の取り残しによる再発のリスクを低減し、同時に健康な歯質を削り過ぎることを防ぎます。

歯を最高20倍以上にまで拡大して見ることができる顕微鏡です。
肉眼では決して見ることのできない、歯の微細な凹凸や、詰め物との隙間、小さな虫歯の兆候までを明確に捉えることができます。
すべての治療を、この「拡大視野」の下で行うことが、当院の標準です。
歯の神経は、歯に栄養を供給し、歯を丈夫に保つための重要な組織です。
神経を失った歯は、枯れ木のようにもろくなり、将来的に破折するリスクが高まります。
当院では、深い虫歯であっても、可能な限り神経を残す「歯髄保存療法」に力を入れています。
特殊な薬剤である「MTAセメント」を用いることで、従来であれば神経を取るしかなかったような症例でも、神経を保護し、温存できる可能性が広がります。
虫歯が歯茎の下の深い部分にまで進行してしまった場合、多くは「抜歯」と診断されます。
しかし、当院ではそのような歯でも諦めません。
「クラウンレングスニング」という歯周外科処置を行うことで、歯茎の位置を調整し、虫歯の部分を歯茎の上に露出させます。
これにより、精密な土台を立て、安定した被せ物を取り付けることが可能になります。
すべての歯に適応できるわけではありませんが、歯を残すための選択肢を一つでも多くご用意しています。
根管治療は、虫歯治療の中でも特に高度な技術と精密さが要求される、専門的な治療分野です。

歯の内部には「根管」と呼ばれる、神経や血管が通る非常に細い管があります。
虫歯がC3以上に進行すると、この根管の中に細菌が侵入し、歯髄が炎症を起こしたり、壊死したりします。
この感染した歯髄をそのままにしておくと、激しい痛みが続くばかりか、細菌がさらに奥へと進み、歯の根の先端に膿の袋を作ったり、歯を支える顎の骨を溶かしたりすることもあります。
根管治療は、この感染した歯髄を徹底的に除去・清掃・消毒し、根管内を無菌的な状態にした上で、再び細菌が侵入しないように薬剤で密閉する治療です。
根管治療は非常に成功率が低い治療だと言われることもあります。
その理由は根管が非常に複雑な形状をしており、肉眼では見えない暗く狭い空間での、手探りの作業になりがちだからです。
当院では、この「手探りの治療」を完全に排除し、科学的根拠に基づいた精密な治療を行うため、以下の取り組みを徹底しています。
治療を始める前に、根管の数、長さ、曲がり具合、病巣の大きさなどを三次元で正確に把握するため、歯科用CTによる撮影を行います。
また、電気歯髄診断器を用いて神経の生死を客観的に判断し、治療の必要性を的確に見極めます。
根管治療の成功は、いかに根管内を無菌状態にできるかにかかっています。
当院では、治療する歯以外をゴムのシートで覆う「ラバーダム防湿」を必ず行います。
これにより、唾液に含まれる細菌が治療中に根管内へ侵入するのを防ぎ、安全な環境を確保します。
これは、精密な根管治療を行う上での絶対条件です。
マイクロスコープを使用し、暗く狭い根管の内部を明るく拡大して、目で直接見ながら治療を進めます。
汚染された組織の取り残しを防ぎ、複雑な根管の隅々まで、徹底的に清掃・消毒することが可能になります。
柔軟性に優れた「ニッケルチタンファイル」という器具を使用し、複雑に湾曲した根管にもしなやかに追従し、精密な清掃を実現します。
さらに、非常に難しい症例に対しては、定期的に根管治療を専門とする歯科医師(エンド専門医)を招き、治療を行う体制も整えています。

虫歯治療や根管治療が無事に終わっても、それがゴールではありません。
治療した歯を、そして他の健康な歯を、これから先も長く守っていくための新たなスタートです。
特に根管治療を行った歯は、どうしてももろくなります。
そのため、歯が割れてしまうのを防ぎ、しっかりと噛む機能を取り戻すために、土台を立てて丈夫な被せ物(クラウン)で保護することが重要です。
そして何よりも大切なのは、これ以上虫歯や歯周病にならないための、ご自宅でのセルフケアと、歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアです。
私たちは、あなたの生涯にわたるお口の健康のパートナーとして、末永くサポートさせていただきます。