歯周病治療・歯茎の再生治療
Periodontal disease

歯周病は、痛みなどの自覚症状がほとんどないまま静かに進行するため「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれています。
そして日本人が歯を失う原因の第一位が、この歯周病なのです。
さらに近年の研究では、歯周病菌が血流に乗って全身を巡り、糖尿病や心臓疾患、脳梗塞、誤嚥性肺炎など、様々な全身の病気にも影響を及ぼすことが分かってきました。
お口の健康は全身の健康の入り口です。
私たちは歯周病を単なるお口の中の病気としてではなく、患者様の生涯にわたる健康を守るための重要な課題として捉えています。
当院が目指すのは、歯周病の進行を確実に止め、健康な状態を取り戻し、維持すること。
そして進行してしまった場合でも、失われた歯周組織(骨や歯茎)を再生させる先進的な治療にも対応し、あなたの大切な歯を一本でも多く守り抜くことです。
歯周病治療の第一歩は、ご自身の状態を正しく知ることから始まります。
以下の項目に一つでも当てはまるものがあれば、歯周病が始まっている可能性があります。
どうぞお早めにご相談ください。
歯周病の直接的な原因は「プラーク(歯垢)」です。
プラークは単なる食べカスではありません。
それはおびただしい数の細菌が生息する「生きた細菌の塊(バイオフィルム)」なのです。
このプラークが歯と歯茎の境目に付着し続けると、細菌が出す毒素によって歯茎に炎症が起こります。
これが歯周病の始まりである「歯肉炎」です。
プラークは、およそ48時間で石灰化し、「歯石」という硬い物質に変化します。
歯石そのものに毒素はありませんが、その表面はザラザラしているため、新たなプラークが付着しやすくなる「細菌の格好の住処」となります。
この歯石を足場として、さらにプラークが増殖し、炎症が歯茎の奥深くへと進行していくのです。
歯周病は、歯を支える組織がどの程度破壊されているかによって、進行段階が分けられます。
| 段階 | 状態 | 主な症状 | 治療方針 |
|---|---|---|---|
| 軽度歯周病 (歯肉炎) |
歯茎のみの炎症 | 歯磨き時の出血 | セルフケア・クリーニング |
| 中等度歯周病 (歯周炎) |
骨が溶け始める | 歯の動揺・口臭 | 歯周基本治療 |
| 重度歯周病 (歯周炎) |
骨の大部分が失われる | 歯の大きな動揺・膿 | 歯周外科・再生療法 |

プラークによる炎症が、歯茎に限定されている状態です。
歯を支える骨にはまだ影響がありません。
歯磨きの際に出血が見られることがありますが、痛みはほとんどありません。
この段階であれば、正しいセルフケアと歯科医院でのクリーニングによって、健康な状態に回復することが可能です。

炎症が歯茎の奥へと広がり、歯を支える顎の骨(歯槽骨)が溶け始めた状態です。
歯と歯茎の間の溝(歯周ポケット)が深くなり、歯が少し揺れ始めます。
歯茎からの出血や腫れ、口臭などの自覚症状も現れやすくなります。

歯槽骨が半分以上溶けてしまい、歯が大きくグラグラする状態です。
歯周ポケットは非常に深くなり、膿が出たり、強い口臭を伴ったりします。
食事の際に痛みを感じることも多くなります。
この状態を放置すると、歯が自然に抜け落ちてしまいます。
歯周病治療の基本は、原因であるプラークと歯石を徹底的に除去し、細菌が再び増殖しにくいお口の環境を創り上げることです。
当院では、科学的根拠に基づいた、精度の高い治療プログラムを構築しています。
効果的な治療は、正確な現状把握から始まります。
当院では、以下の検査を組み合わせて、患者様一人ひとりのお口の状態を詳細に診断します。
歯周病の進行度に関わらず、すべての患者様に行っていただく、最も重要な治療フェーズです。

虫歯や歯周病は生活習慣に大きく関わっている病気です。虫歯や歯周病の治療が完了しても、その生活習慣に弱点があると再発の原因となる可能性が高くなります。そのため、歯科衛生士より生活習慣についてヒアリングさせていただき、個々の患者様へアドバイスさせていただいています。

歯周病治療の成否は、患者様ご自身による日々のセルフケアにかかっていると言っても過言ではありません。
当院の経験豊富な歯科衛生士が、あなたの歯並びやライフスタイルに合わせて、歯ブラシの選択から、磨きにくい場所の清掃方法まで、丁寧に指導します。
私たちは、著名なフリーランスの歯科衛生士を講師として定期的に招き、院内セミナーを開催しています。
歯科衛生士の知識と技術を常に高いレベルで維持し続けることが、患者様への貢献に繋がると信じています。

歯科衛生士が専門の器具を用いて、歯の表面や歯周ポケットの奥深くに付着した、歯ブラシでは除去できない歯石を徹底的に取り除きます。
歯の根(ルート)の表面を滑らか(プレーニング)に仕上げることで、プラークが再付着しにくい環境を整えます。
治療によって改善したお口の状態を維持するため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
当院では、患者様の負担を軽減し、より高い清掃効果を得るための機器を導入しています。

非常に微細なパウダー粒子を、水と共に歯の表面に吹き付けることで、バイオフィルム(細菌の膜)を効率的かつ優しく除去するシステムです。
従来の器具のような硬い感触や不快感が少なく、歯や詰め物を傷つけることなく、隅々まで短時間で清掃することが可能です。
歯周基本治療を行っても、深い歯周ポケットが残ってしまう場合や、骨の破壊が著しい場合には、より積極的な外科的アプローチが必要となります。
これは、歯周ポケットの奥深く、器具が届かない場所にある歯石や汚染物質を、直接目で見て完全に取り除くための処置です。
麻酔をした上で歯茎を一時的に切開し、歯の根を露出させます。
これにより、病気の原因を徹底的に除去することが可能になり、歯周病の再発リスクを大幅に低減させることができます。
かつては、歯周病で一度失われた顎の骨は、元には戻らないと考えられていました。
しかし、歯周再生医療の進歩により、失われた組織を、ご自身の治癒能力を利用して再生させることが可能になっています。
歯周外科治療を行う際に、骨が失われた部分に「リグロス」などの特殊な薬剤を塗布します。
この薬剤が、骨や歯茎を作る細胞に働きかけ、歯を支える組織の再生を促します。
これにより、従来であれば抜歯しか選択肢がなかったような重度の歯周病の歯でも、その寿命を延ばし、保存できる可能性が生まれます。
この高度な治療を成功させるためには、事前の正確な診断と、精密な手術手技が不可欠です。
当院では、歯科用CTを用いて骨の欠損状態を三次元的に詳細に把握し、手術のシミュレーションを行います。
そして、手術中はマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用し、患部を拡大視野で確認しながら、極めて精密な処置を行います。
再生療法は、当院の総合力が問われる治療分野であり、私たちは自信をもってこの治療に取り組んでいます。

歯周病は高血圧や糖尿病と同じ「生活習慣病」の一つであり、治療が終わったからといって完治するものではありません。
油断するといつでも再発するリスクを抱えています。
治療によって取り戻した健康な歯茎の状態を生涯にわたって維持するためには、ご自身のセルフケアに加え、私たちプロフェッショナルによる定期的なメンテナンスが絶対に不可欠です。
患者様一人ひとりのお口のリスクに応じて、1ヶ月、3ヶ月、半年に一度といった間隔で、定期的な検診とクリーニングをご案内します。
私たちは、あなたの生涯にわたるお口の健康のパートナーとして、末永くサポートさせていただきます。